D1-金の翼で空を切り裂け-(未完)
【人間→竜】
テッペンって言葉ほど、すがすがしくカッケー言葉は無いって俺は思ってる。だってテッペンって言うのは、 もうこれ以上上なんて存在しない、究極ってことだ。限界100%ギリギリの、絶対領域。そこへ上る力を持つものだけが、 立つ事を許される最終世界。
だから、俺はテッペンが大好きだ。そして、俺はテッペンに相応しいし、テッペンは俺に相応しいって信じて疑わない。 勿論俺は口だけじゃない。努力だって何だってやってきた。 残念ながらまだまだ俺は経験不足でテッペンには上り詰める事は出来ていないが(間違っても実力不足とか、井の中の蛙とか、性格悪いとか、 態度でかいなんて言わせない)、いずれテッペンを取るために今までだってこれからだってなりふりを構わずに上を目指し続ける。だから・・・。
「・・・だからよぉ、ドナ。俺ぁこんな所で足止め食ってる場合じゃあねぇんだよ!」
「分かってますよぉ!今やってますからぁ!・・・あぁん、もう!全然センターが応答してくれなぁい!」
「ったく・・・残量調べて出ろっつっただろぉが・・・!」
「だって、足りると思ったんですよぉ!」
俺は助手席に座りながら、左隣の運転席に座る少女を、半ば呆れ顔でにらみつけた。少女・・・ ドナは今にも泣き出しそうな表情で通信端末と格闘しているが、通信感度は10%以下・・・よほど運がよくなきゃあ通じやしないだろう。 そして俺達が乗ってるトラックの、燃料の残量ももう限りなくゼロ・・・。目的地まではまだ大分あるが、 前後に燃料を補充できそうな施設は見当たらないどころか、建物すら周囲数十キロ存在しない荒野のど真ん中。なんつーか、絶望的ってやつだな、 こりゃ。
「元はと言えば、ダグさんがいけないんですよぉ!こんな田舎の大会に参加しようなんて言うからぁ!」
「俺のせいかよ!?そもそも大会に参加したいっていうインナーの意思にサポーターが意見する事が間違いだろうが!」
「ふぇぇぇッ、そんな事分かってるよぉぉッ!・・・ぇグッ、ヒッ・・・!」
・・・とうとう泣き出した・・・16にもなって、ガキじゃねぇんだぞ・・・!俺は頭を思いっきりかいて、一つため息をつく。 そしてチラッと一度後ろを見る。・・・仕方ないか・・・。
「・・・しゃあねぇ、ドナ。ハッチ開けろ」
「ぅぐ・・・ぇ・・・?」
「リアハッチ開けろって。俺がオーラムでひとっ飛びしてやるよ」
「えッ!?でも・・・あれは大会用の調整済んでるんですよぉ!?ここで使ったら、調整しなおさなきゃいけないじゃないですかぁ! 誰が調整すると思ってるんですかぁ!」
「ゴチャゴチャうっせぇ!今すぐに助けを呼ぶにはそれしかないだろう!?それに・・・誰のせいでこうなったと思ってるんだ!」
「・・・ダグさんが大会に参加しようって言うから・・・」
「・・・ほぅ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ふぇぇぇッ、分かりましたぁ!悪いのは私ですよぉ!・・・っぐ、ヒグッ・・・」
ドナは目に涙をため、呼吸を詰まらせながら運転席の横にあるボタンを操作する。数秒後、 トラックの後ろ側が大きな音が聞こえてきたのを確認すると、俺は助手席のドアを開けて、外へ飛び出した。 自分のトラックを見て自分で言うのもなんだが、改めてみると大きなトラックだと思う。長さ、高さ共に、交通法ギリギリだろう。 公道によっては通れないところだってある。そんな巨大なトラックを見上げながら後ろの方へと歩いていく。 そしてトラックの後ろまでたどり着くと、完全に開いた後部ハッチに上るための階段が降りてくる。俺はそれを駆け上がる。 トラックの荷台の中は真っ暗。何も見えやしない。俺は小さな笑みを浮かべながら内壁のスイッチを押す。 すると荷台の天井に付けられた灯りが一斉に点き、俺の目の前に新たな世界を映し出す。
「よぅ、早い出番だぜ、相棒」
俺は荷台の奥に向かって呟いた。俺の目線の先にあるもの。それは4メートルはあろうかという巨大な体躯。全身青い鱗で覆われ、 鋭き爪と牙と角、長い尻尾、光を反射して白く輝く羽毛を纏った翼。伝説に出てくるドラゴンそのものだ。だが、 その身体の中央を見れば一目で分かるし、勘のいいものならその場の空気で分かる。そいつは生きちゃあいないし、 ましてそもそも本物のドラゴンじゃあない。ドラゴンをかたどっただけの作り物に過ぎねぇって事が。ドラゴンの身体の中心、 そこに丁度人が一人入れるぐらいのくぼみが空いている。そう、丁度俺が一人入れるぐらいの。
「・・・っと」
俺は慣れた調子でドラゴンの身体をそのくぼみのところまでよじ登る。そしてくぼみの中へ、ドラゴンを背に仰向けになるようにして入る。 天井のライトが眩しくて、思わず右手で光をしばらく遮るが、徐々に目が慣れたのを実感すると、自分の腕もそのくぼみの中に入れ込む。 丁度俺の四肢が収まるようにくぼみも形作られている。そして右手が収まるくぼみの奥には、小さなスイッチがついている。 俺は一つ深く深呼吸をして、心の中で「よし」と呟くとそのスイッチを指で押す。
その途端ドラゴンの中、内側が突然風船のように膨らみ始め、俺の身体を取り囲むように圧迫する。それは、 例えれば血圧計に似てるだろうか。それが腕だけじゃなくて、全身を包んでいく。しばらくすると、 俺の身体は膨らんだドラゴンの内側の中にすっかり埋もれてしまう。そしてそれと同時に、俺の身体を電気のようなものが走りぬける。
「ッ・・・!」
思わず瞳を閉じて声にならない叫びを上げる。例えようの無い衝撃。それはいつもの事であっても、中々慣れるものじゃあない。 全身が麻痺して、まるで自分が消えていくかのような不思議な感覚。 それを感じるのと同時に既に膨れた内部を隠すかのようにドラゴンの身体の外側が、まず薄い膜で、 更にその上に他の部位と同じような青い鱗が覆っていく。そしてくぼみが完全に隠れきったそこに有るのは、外見だけは完全なドラゴンだった。 くぼみなんていう不自然な部分が無い、そのままのドラゴン。ただ、この時点をもってしてもまだ、そこに有るのは作り物のドラゴンだ。
しかし、静かになったトラックの荷台に、突然鈍い音が響き始める。何かが動いたため、トラックが揺れて軋んだんだ。何かとは、 勿論ドラゴンしか荷台には存在していないのだから、音をたてることが出来るものは他には無い。 ドラゴンはゆっくりとその短い足でしっかりと床に立ち上がる。
その感覚を確かめながら、俺はゆっくりと目を開く。だが、 本来ドラゴンの内側で押しつぶされている俺に見える光景はドラゴンの内部のはずだが、俺は今再びトラックの荷台の中を見ている。 視界も随分広い範囲が一度に見渡せる。俺はゆっくりと目線を下へと下げていく。見えるのはドラゴンの体。 少し右を向くと見えるのはドラゴンの右手。
はい、ここまでです。
非常に中途半端ですねー。
割とアイデア的には気に入った作品で、比較的キャラもよく煮詰められた2人が出てきてますが、 TFシーンの途中で体力を使い果たしあえなく挫折。
ちなみにあらすじは「着用することでドラゴンに変身できるバイオスーツが普及している時代。 そんなドラゴンスーツを使ったレースが世界では大流行。ダグはドラゴンレースのトップレベル-D1-で危険なゲームを犯したとして追放。 再びD1参加資格を得るために世界中のレースに参加している。そんな彼がたまたま立ち寄った田舎の小さなレースで一波乱!」てな感じです。
正確に言えば変身じゃあない作品だったのが、制作意欲自分で削いじゃった原因かもしれないす。
基本ラインはしっかりしてる作品なんでいずれ形変えて何かするかもしれないすね。