ギンガ団極秘計画 第10話
【人間→ポケモン】
by 青合成獣ぁ満月様
永城瑞樹・・・それは自分がシャワーズになる前の名前である
とは言うものの、その名前を名乗ることはもう無いだろう・・・
たった一つの過ちが、どれほどの苦しみを与えてしまったのか?
私にはそれを償う責任があるのです・・・
『レントラー、“かみなりのキバ”!ロズレイド、“マジカルリーフ”!』
私にとってポケモンバトルは生き甲斐
バトルの戦術を考え相手に完璧という二文字をもって勝利する・・・
今まさにその時であり、私に興奮と快感を与えてくれる
相手はギャラドス、ラグラージと水タイプの組み合わせであったが
レントラーの牙は確実にギャラドスの急所に食い込み、
ロズレイドのマジカルリーフは一つ残らずラグラージの体にヒットし、
あっという間に2体のポケモンはふらりと倒れてしまった
『うぅ・・・くっそぉ、一つもダメージを与えられなかったなんて・・・』
相手のトレーナーは賞金を渡して逃げるように立ち去っていく
しかし、私にとってお金よりなどはどうでも良く
より多くの勝利数を得ることが日課となっていたのだった・・・
そしてロズレイドとレントラーをモンスターボールへと回収すると
服装を整え、最寄りのポケモンセンターへと足を運び受付係のラッキーに
手持ちのポケモンをすべて預ける・・・
そしてセンター内にあるテーブルのある席に座り、ふぅ・・・と一息つくと
手持ちのバッグからノートパソコンを取り出し、電源を入れる
『水タイプのポケモンか・・・、まだ私の手持ちにはいなかったな・・・』
そう独り言を呟きつつ、プログラムを立ち上げると
レントラーとロズレイドのデータが表示され、
そこに今日の戦術、成長、体調の具合を打ち込んでいく
私は毎日これを欠かすことは無く、ポケモンの管理は全て完璧に行っていた
そして一通りのデータを打ち込んだ後に、次はインターネットで
水タイプについて検索していくことにした
検索ヒット数は数え切れないほどあったが、私にとってそれらのデータを見通すことは
何の苦でもなく、むしろさらに興味をそそる物があった・・・
気が付いて時計に目をやると二時間は経っていただろうか?
しかし、それほど大量のサイトを見通したつもりは自分には無かった
ポケモンのデータを見ては、それが自分の戦術にどう繋がるか・・・
それらを思案し判断するという作業に時間をかけ、一匹のポケモンの
考察を終えるだけでも、20分ほど掛かっており同時に立ち上げていたメモ帳には
数百行にも及ぶ文字の羅列があった・・・
さすがに二時間も座り続けた結果、疲れも出てきたので少し休憩がてら
センターのロビーにある自動販売機でコーヒーを買うことにした
『ずいません・・・、僕のシャワーズが・・・ちゃったんですけど・・・』
後ろから少年の声が聞こえた、涙声なのでよく聞き取れないが
ここに着たのだからどういう事情なのかは簡単に察することが出来た
『はいはい、男の子は泣いちゃ駄目よ・・・?今そのシャワーズちゃんを元気に
してあげるからね・・・』
『うん・・・うん・・・』
ポケモンを渡してからも、カウンターからは離れず
その男の子は今か今かと待ち続けていた・・・
そんなに大切なポケモンだったのだろうか、と思いつつも席に戻り
コーヒーを一口飲む・・・
『そうか・・・シャワーズか・・・』
ふと思い出す・・・偶然にも先日知り合いにイーブイの子が沢山生まれたので
一匹譲り受けていたことを・・・
飲み終えたコーヒーの空き缶をパソコンの横に置き、シャワーズについて検索してみる
愛着のある姿が評判なようで、ブリーダーやポケモンコンテストなどのホームページが
多くヒットしたが、バトル用のシャワーズについて考察のページもあった
『ミロカロスやスターミー等の同じ水タイプに劣るが
体力は上で防御・特防はミロカロスとほぼ同等・・・か』
ミロカロスはヒンバスのうつくしさを最大に上げなければ進化できないポケモン
そしてスターミー・・・もといヒトデマンは進化が容易であってもシンオウ地方で
見つける事は困難極まりないだろう・・・
最も私は強いポケモンを鍛え上げることに私は苦を感じるわけではない
むしろ手間暇をかければかけるほど至高のポケモンが出来上がったとき、
それまでの苦労に比例するよう、喜びもまた大きい
だが、シャワーズというポケモンにはそれ以上の何かを感じてしまった
元々イーブイは研究用に貰っていたものだが、今目の前でそれを確かめられる・・・
私の中で研究意欲というものが満たされていくと、すぐさまシャワーズへの育成計画が
立てられていく・・・
進化に欠かさない水の石、技マシン、そしてステータスアップの道具・・・
木の実のバランスも計算によって完璧に揃えられていく
あとはセンターに預けていたイーブイを引き取るだけだった
『ブイッ・・・・』
モンスターボールから久しぶりに出ることができたイーブイは
体を震わせると、見慣れない景色に戸惑いつつも私の顔を認識し新たなトレーナーと
認識してくれたようで、早速こちらに擦り寄りコミュニケーションを取ってきた
『イーブイの状態に問題は無いな・・・、早速始めるとするか・・・』
イーブイは私の無関心な反応に首を傾げつつ、野生のポケモンが現れる草原へと進めば
何一つ疑うことなく、その後を追ってきたのだった・・