【人間→ポケモン】
by 青合成獣ぁ満月様
どれぐらいの時が経ったのだろう・・・?
俺がこの姿となって何日、何週間、ましてや何ヶ月なのか・・・
少なくとも俺の体はすっかりブラッキーの感覚へと適応していた
最初はまだぎこちなかった四足歩行も今では獣のごとく俊敏な動きが可能になり
元人間と言っても誰も信じることは無いだろう・・・
『ナイト・・・?ねぇ、聞いてくれていた?』
『あ・・・、すまない・・・』
またしてもソルの話を聞き逃してしまった・・・
自分の世界に入ってしまうこのクセ、なんとかならないものだろうか・・・
『とにかく、僕たち以外にも人間をポケモンにするっていう研究が進んでいるんだよ
この研究所じゃなくって他の支部でもね』
『相変わらずふざけた真似を・・・』
どうにか反撃の手段を考えようとする・・・
しかし考える時間を割いてしまうかのようにあの男が着てしまった
『さぁて、ナイト君・・・時間だ・・・』
『・・・ふん』
『ナイト・・・気をつけてね・・・』
『大丈夫・・・大丈夫だ』
毎日のようにデータを採られて戦闘、ブラッキーの感覚はここでも発揮していた
相手のポケモンの行動のパターンも徐々に掴めてしまっているのだ
本能的に・・・、かつ指示よりも早く技を出し反撃していく・・・
『素晴らしい成長ぶりです・・・、ポケモンの力と人間の頭脳の一体化・・・
これはきっと幹部昇進も間違いないですよ・・・!』
『ふふ・・・まだまだ私の研究はこんなものでは終わらんよ・・・』
『と、言いますと・・・?』
『現在確認されているイーブイの進化形態は5つだが・・・
どうやらまだあるらしい・・・、それが把握できればいずれは・・・』
『なるほど・・・』
俺は戦闘訓練のインターバルの間、奴らの言葉に耳を傾け情報を探っていた・・・・
どうやら他にも奴は研究を行っているようだ・・・
「ククク・・・そんな人間様の話を聞いて楽しいのかぁ・・・?」
『ん・・・?』
聞いたことの無い声に思わず振り返る、そこには先ほどまで戦っていたゴースだった
「どうしたぁ・・・?そんなに俺と話すのが怖いのかぁ・・・?」
『・・・別に』
「珍しいか・・・?俺にとっちゃお前のほうがよほど珍しいと思うがなぁ」
周りの物質をすり抜けて俺の周りを飛び回っている・・・
“人”の思いも知らずに、目ざとい奴だ・・・
「お前・・・元々人間だったってなぁ・・・?」
『そうだ・・・、そこの奴に俺は・・・』
「そりゃあ御愁傷様でしたってなぁ・・・クククッ・・・」
『・・・言いたいことがあるなら、言えよ』
ゴースの小馬鹿とした態度に、つい睨みをきかせてしまう
「おっと・・・そう怒るなよ、今は同じポケモンじゃねぇか・・・
仲良くやろうじゃないかぁ、同志さんよぉ・・・」
『ふん・・・お前みたいなのと一緒とはな、全く持って不愉快だ・・・』
「ククッ・・・、なかなか意地っ張りな奴だねぇ・・・」
コイツと話していると不快感で一杯になるな・・・
もう話を聞かずに無視しよう、そう思ったとき・・・
「お前は・・・このまま黙ってポケモンになっちまうのかぁ?」
『そんなつもりは無い・・・』
「ほう・・・だったら、ここは一つ、ばしっと革命でも起こしてくれよぉ・・・」
『革命・・・だと?』
「俺達ポケモンだって好きで付き合っているわけじゃないんでねぇ・・・
こっちとしても早くこういう生活からはおさらばしたいのさぁ・・・」
『そうか・・・悩んでいるのは俺達だけじゃなく、ここのポケモン全て・・・』
「ま、そんなところだなぁ・・・ここ連中が皆期待しているんだぜぇ?
ナイトさんよぉ・・・クククッ・・・」
不適にゴースが笑みを浮かべる・・・ゴーストタイプのポケモンは
内面的なことでさえもつかみどころが無いということだろうか・・・?
その後も休憩を再開してバトルが続き、何一つ変わりなく今日のノルマが終わる
しかし、さっきのゴースの言葉は部屋に帰ってもまだ頭から離れることは無かった
俺がこれからどうするべきなのか、考えて・・・考えて・・・かんが・・・え・・・
『すいませんが、そこにあるメスを取ってくれませんか?』
『え・・?あ、あぁ・・・・』
俺は目の前にいる白衣とマスクをつけた男にメスを“手で”渡した
何故、こんなことをしているのかは、分からない・・・ただ指示されるがままに動く
だが・・・手術台に目が行ったとき、そこにはエーフィ・・・ソルだった・・!
『ソルッ!?なんでここに!?』
慌てて俺はメスを奪い、ソルを解放しようとした・・・
しかし、手を伸ばした瞬間・・・その腕が真っ黒に染まっていく
俺の視界は徐々に低くなり、手術台が大きくなって・・・ソルの姿が見えなくなった
『これよりエーフィの解剖を開始します・・・』
『か、カッ・・・・ブラッ・・・・!?(解剖だと・・・!?』
『開腹・・・』
『ブラァァッキィィィイ!!!!!!!(やめろぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!)』
俺は抵抗も出来ないままソルの鮮血で視界は真っ赤になってしまった・・・
『・・・イト!ナイト・・・、起きて・・・!』
『はっ・・・!?無事・・・なのか?』
『随分うなされていたみたいだけど・・・大丈夫・・・?』
恐らく、自分が生きてきた中で一番の悪夢だっただろう
冷や汗と荒い息、そして心臓の鼓動は未だに高鳴ったままだ
俺はなんとか気分を落ち着けて汗で濡れた4本足で立ち上がる
『それで・・・俺に何か用でもあったのか・・・?』
『あ、そうなんです・・・見てください!この3つのモンスターボール』
目の前にあったのは、頑丈そうなアタッシュケースが開いており
その中には衝撃を吸収する素材に包まれた3つのモンスターボールがあった・・・