ギンガ団極秘計画 第5話
【人間→ポケモン】
by 青合成獣ぁ満月様
『ソル・・・!』
沢山痛めつけられたにも関わらず、俺の体は誰かに後押しされるように
ソルの元へと向かっていく
俺の声に耳がピクリと動いた、ソルの体は俺以上の傷があり
満身創痍と言わんばかりの体だが、意識だけはかろうじて残っていたようだ
『しっかりしろ・・・大丈夫か・・・!?』
『ナ・・イト・・・?ナイト・・・!無事・・だったんだね・・・?』
『俺のことなんてどうでもいいだろう・・・、お前こそこんなにボロボロじゃないか』
『・・・あの人たちね、僕にバトルをしろって、言うんだ・・・
でも僕には、できないよ・・・ポケモンを傷つけることなんて』
顔はソルの目は少し潤んでいた
ソルはさらに弱々しい声で話を続ける
『僕は戦うためにポケモンになったわけじゃないのに、
ポケモンと仲良くなってお話とかいろいろしたくて・・・』
『ソル・・・・』
『このまま戦闘用のポケモンになるなんて嫌だよ、僕戦いたくなんかない・・・』
『それで、ずっと攻撃を受け続けたのか・・・?』
『ううん、それだけじゃないんだ
私の言うことを聞けって鞭でも沢山叩かれた・・・』
お人よしの性格なのだ、戦えというのが無茶な話だろう
いつしかソルは大粒の涙を流し、泣き始めていた
俺は再び怒りの感情で一杯になった
『くそっ・・・!!!奴らめ・・・!』
怒りのあまり思わず壁に向かって“やつあたり”をしてしまう
それは奴らに対する怒りだけではなかった
こんな状況にも関わらず一切の手出しをすることができない
自分自身に対する怒り・・・
俺は何度も“やつあたり”を繰り返した
壁はとても頑丈で壊れることはなかった、それでも俺は繰り返した
例え自分に反動が返ってきても、自分自身に衝撃が返ってこようとも・・・
『もうやめてソル・・・!これ以上自分自身を傷つけちゃ駄目だ!』
いつの間にか泣き止んでいたソルは必死に俺の体を押さえ込む
ソルの声に俺はなんとか冷静さを取り戻すことが出来た
『すまない、俺は・・・』
『いいんだ・・・君が落ち着きを取り戻してくれたならそれで・・・』
『ソル・・・』
そうだ・・・、暴れたところで何も解決はしない
それにこれ以上ソルに心配を掛けさせるわけにもいかない
俺がなんとかしないと・・・
『それにしても・・・僕たち、どうなってしまうだろう・・・』
『俺達はこのままエーフィとブラッキーとしてギンガ団の兵士として
さらに訓練されていくだろうな・・・』
『そんな・・・』
俺はともかく、ソルには耐え切れるはずがない
早く脱出する方法を考えないと・・・
だが今の俺に出来ることは・・・?
この檻で出られるところはドアの一つしかない
そしてドアを壊そうにも首輪でほとんどの能力を封じられてしまっている・・・
『・・・駄目だ、仮にドアの外に出られてもすぐに捕まえられてしまう』
文字通り八方塞がりだった・・・
さらに追い込みをかけるようにドアは開き、あの研究者がこちらを
見つめている・・・
『ふふふ、元気かい?二人とも・・・
いや、二匹ともといったほうが正しかったかな・・・?』
どうやら訓練の時間が来たのだろう、俺は奴のそばへ行く
別に服従したわけじゃない、だが今は反撃したところで脱出は不可能
今は耐えぬいていくしかない・・・
『あ、そうそう・・・ソル君
君は戦闘用として使えないという結論が出てね・・・
とりあえずは雑用係に回ってもらうことにするがこれ以上我々に
従わないつもりなら、君の処分すら考えることになるからそのつもりで・・・』
『そんな・・・処分だなんて・・・』
使えないものは遠慮なく切り捨てる、ということか
だが逆を言えば、ソルはバトルをしなくて済むということでもある・・・
『ナイト・・・僕・・・』
『・・・俺に遠慮しているのか?余計なお世話だ』
『でも・・・!』
ソルが心配そうな顔で目の前まで駆け寄ってくる
『お前はできるだけ情報を集めろ、どんな些細なことでも構わない』
『ナイトはどうするの・・・?』
『奴らに付き合ってやるさ・・・、来るべき時が来るまでな・・・』
その時、モンスター回収の赤い光が俺に当たる
俺はソルの目の前から消える前に小さく合図を送った
『お話は済んだかな・・・?君もすぐに向かえが来るから
大人しく待っていたまえ・・・』
モンスターボールの中に入ってもソルが俺に呼びかけている声が聞こえた
俺はその声に届かないと分かっていても返事をする
“頼んだぞ、ソル・・・