ギンガ団極秘計画 第5話
【人間→ポケモン】
by 青合成獣ぁ満月様
『・・・・ここは?』
俺は暗闇の中、目が覚めた
周りは何もない漆黒の世界、俺は死んだのか・・・?
一瞬そう思い込んだが、それはすぐにかき消された
外から何かが聞こえる・・・男性が二人・・・何かを話し合っている
俺はその会話に耳を傾けた
『思った以上の成果を得ることはできなかったか・・・』
『はい、やはり経験が足りないようです
相性の良し悪しだけでは・・・実践で使うとすればまだまだ訓練が必要かと・・・』
『そうか、俺は・・・負けたのか・・・』
ゴースとのバトル・・・、相性だけしか考えず
相手を甘く見すぎてしまっていた・・・
どうやら俺は気を失ってそのままボールの中に回収されたようだ
その二人の声は俺の知っている研究者の声とその助手らしき男の声だった
『・・・一週間で調教しろ、どんな手を使って構わない』
『どんな手と言われましても、団員に手荒な真似をすると
「上部」に響くのでは・・・?』
『大丈夫だ、コイツはただのポケモン。人間に戻ることなんてできないんだからな』
『(え・・・)』
俺は人間に戻れない・・・だと?
『元に戻さないんですか・・・?』
『お前は元に戻せると思っていたのか・・・?ポケモンは進化できても退化することはできないだろう?それと同じ、
コイツはもう一生ブラッキーのままだ』
俺はその言葉を聴いた瞬間頭の中が真っ白になった
もう・・・戻れないだと?ずっとブラッキーでいろと・・・?
何も考えることができなかった、頭の中でその言葉がひたすら響いていただけだった
そして、それは次第に言いようの無い絶望感と憎しみへと変わっていった
『少しの間付き合えばいいんじゃなかったのか・・・
実験が終われば元に戻れるんじゃなかったのか・・・!?』
俺はボールの中で聞こえるはずの無い怒鳴り声を上げ、力任せに暴れた
すると、それに耐えかねたボールが開き、俺は外へと飛び出すことが出来た
『ブラッ!ブラァァッ!!!?(俺を元に戻すんじゃなかったのか!!?』
力いっぱい叫んだつもりだが、鳴き声しか出すことが出来なかった
だが彼らは大体分かったようだ・・・
『その様子では聞かれてしまったか・・・
まぁ、君はブラッキーとして我々に貢献してくれればそれでいいんだがね』
『(こいつ・・・!)』
手のひらを返したような態度、人間とではなくただの実験材料としての扱い
奴に対する憎しみはそのまま“あくのはどう”としてのエネルギーに転換していく
だが俺は気がつかなかった、助手がとっさの判断でモンスターボールからポケモンを
出していたことを・・・
今にも奴らに“あくのはどう”放とうとしたとき
『レントラー、“かみなりのきば”!』
『ブラァァァァァアアアアッ・・・!!(ぐあぁぁぁぁぁああああっ・・・!!』
レントラーの牙は俺の体に深く食い込み、さらに電流が俺の体を突き抜ける
一撃で俺は瀕死寸前にまで追い込まれた
どうにか体制を建て直し、反撃しようとこころみるのだが
『ブ・・ラ・・・(体が・・・動かない・・・』
“かみなりのきば”のせいでまひ状態・・・体の自由が利かなくなっていたのだ
立ち上がることすらままならず、その場で倒れてしまう
『君にはこれから教育が必要なようだ・・・ブラッキーとしてな、
こいつを連れて行け』
『あ、はい・・・!』
『おっと・・・それからもう一つ、ポケモンはボールの中でも
音を聞くことはできる・・・こいつを報告書に書き加えておかないとな・・・』
俺は奴を睨みつけることは出来ても、一切の抵抗をすることができなかった
悔しかった・・・こんな無力な自分を
あの時気がついていれば、なぜ断っておかなかったのか
そしてたった少しでも欲望に目が眩み興味を持ってしまったこと
ただ後悔することしかできなかった・・・
それからというものの俺への扱いは変わった・・・
俺は否応なしに毎日ポケモンバトルを強制される
たとえ力尽きようとも、キズぐすりやげんきのかけらといったもので
すぐさま回復させ、休むことなく戦わされていく・・・
例え体が動かなくなってしまったとしても、次はわざマシンによる教育だった
人間の知能さえあれば技などいくらでも覚えさせることは可能という結論らしい
膨大な情報を一気に頭の中に注がれていく感覚は
もはや拷問とも言えるものだった・・・
さらに何かの機械が埋め込まれている金属性の首輪を付けられてしまう
こちらの力を封じ込めてしまうという厄介な代物だ
これで俺は完全に奴らには逆らうことが出来なくなっていた
もはやポケモンですらない・・・、「奴隷」という言葉が相応しいだろう
俺はそんな仕打ちに自分を失いかけていた・・・
何日たったのかも分からない、俺はようやくソルと出会った檻に戻り
休憩とも言える時間を手に入れることが出来た
しかし休憩を喜ぶほどの元気は無かった・・・
いや、俺が檻で見かけた光景はさらに俺を絶望へと導いた・・・
『ソル・・・!』
そこには生傷で耐えないエーフィが横たわっていたのだ