PBE Beginning 第6話
【人間→ポケモン】
それはまだ、ハイスクールに入りたての頃。私はよく周りから「まだまだ子供だね」って言われていた。男女の垣根なく、 年齢の差も気にせず、老若男女問わずに誰とでも付き合うことが出来る辺りのことを言っているらしい。その付き合い方が、 大人の八方美人というよりも、気を使わない子供っぽさを感じるためのようだけど、私は別段その事を気にしちゃいなかったし、 人間って誰とでも付き合えるもんだと思ってたからそういうことを言うほかの友達に対して、何を深く意識してるんだろうって考えたりもした。 そしてその頃、私と同じように子供っぽいといわれていたのが、リョウだった。彼も誰とでも仲良くできるタイプの人間で、 そんな私達は同じタイプ同士自然と仲良くなっていった。周りは親密になっていく私たちを気にかける人もいたけど、 当の私たち2人にはひとかけらの恋愛感情も生まれなかった。むしろ恋愛が何かなんて、思春期であるにもかかわらず分かっちゃいなかった。
「ったく、俺達の何処が付き合ってるように見えるんだよ」
「そりゃあ、年頃の男女が仲良くずっといれば噂ぐらい立って当然でしょ?」
「こっちにはその気なんて全然無いのにな」
そんな会話をしたことを何となく覚えている。・・・遠くもあり近くもある、小さく薄い思い出の一つ。そういう記憶はまだ幾つかあった。 あれは確か・・・文化祭の後、満天の星空の下、校舎の屋上で打ち上げ花火を見ていた時だったと思う。
「ぁーあ、折角綺麗な星空なのに台無しだな」
「いいじゃん、星なら毎日見れるけど、花火はそう滅多に見れるもんじゃないし」
「まぁ、そうなんだけどね」
彼はそう言って少し笑った。そのあと少し沈黙していたけど、再び彼が言葉を切り出した。
「・・・カナはさ、進路とか決まったのか?」
「私?・・・うーん、ちょっと考えてるとこかな」
と言ってはみたものの、実はこの時点で私の気持ちは決まっていた。あのPBEに入団しようって。
「そういうあんたはどうなの?決めてるの?」
「いや、俺は正直さっぱり」
リョウはそう言って笑った。・・・まさかこの時、 リョウの心の内でもPBEへの入団を決めていたことなんて私は想像もしていなかったし、 彼もまた私が同じ決意をしていた事なんて知る由もなかった。私たち2人はこの時点で知らず知らずのうちにまた出会う運命になっていたんだ。
・・・あれから約半年ぐらい。今私達はPBEに入団するという夢をかなえて、私はチコリータに、リョウはヒトカゲになった。 姿は変わったけど、私達は学生の頃と変わらない関係をPBEでも築いていけると思っていた。でも、ポケモンの姿になったとはいえ、 一応私達は社会人。学生っていう子供の枠組みを外れた私たちの関係が変わらないままであり続けるなんてことは本当は無かった。そして私は今、 こうしてリョウのことを意識してしまっている。どうにも止まらない胸の高鳴り、 彼のことを考えると胸が温かくなるのと同時に言い様の無い不安感も同時に押し寄せてくる。それは今まで私が感じた事の無い感情だった。 モンスターボールの静寂の中では、チコリータの小さな鼓動も響いて聞こえるようだった。
その時、外から突然声が聞こえてきた。
「出てきて!チコリータ!」
「チコッ!?」
急に私はボールに入る時と同じように、自分の感覚が遠のいていくのに気づいた。そして再び私の意識は短く途切れ、 次に気づいたときにはアスファルトの地面にしっかり4本の足をついて立っていた。私を包んでいた赤い光もすぐに消えてなくなっていく。 どうやら外に出してもらえたようだ。ということは・・・。
『着いたよ、会場に』
横からピカチュウ・・・マイ先輩が声をかけてきた。私はそう言われ辺りを見渡す。・・・この会場に来たのは初めてじゃない。 PBEに入る前、PBEの公演を見に何度か訪れたことがある。全国的に有名で巨大な規模を持つPBEグループとしては、 決して大きい方には入らないスタジアムだが、それでも身体の小さくなった私にはとても大きく見えていた。
『さぁ、関係者入り口はこっちだよ!早く早く』
『あ、はい。今行きます』
マイ先輩に急かされて、私は関係者入り口の方へと駆けて行った。本当は関係者入り口の内側で降りるんだけど、 今日は新人である私たちのためにスタジアムの前に出してくれたらしい。私はマイ先輩に連れられてスタジアム裏側を歩いていく。 廊下の並びには幾つもの部屋が並び、奥のほうには練習用の施設もある。よくあるほかのスポーツのスタジアムとやはりこの辺りは同じようだ。 しかし、今まで憧れていたPBEのその舞台裏に入る事が出来た私は徐々に気分が高揚していた。そして長い廊下を抜けると、 急に開かれたところへと出た。
『うわぁ・・・!』
『ここがスタジアム・・・って言わなくても分かるよね』
『えぇ・・・でも、今日これからここで私は戦うんですね・・・ポケモンとして』
『そう、頑張ってね!勝ち負けよりもどう戦うか!勝つ事だけがスターへの道じゃないからね!』
『・・・はい』
私はそう小さく返事をしてスタジアムの方を見つめていた。PBEのステージには幾つかバリエーションにとんだステージもあるが、 今日は私たち新人のことと、その後戦うプラチナランクの試合に備えて特に障害の無いオーソドックスなノーマルステージがセットされていた。 私はそのまま視線を上に向ける。ステージからやや離れた高い位置に360度囲むように観客席が設置されている。 今までは私もそっちに座る側だったけど、今日はここでポケモンとしてバトルをし、それを観客が見る事になる。・・・でも・・・その相手は・・ ・。
『・・・カナ?』
『・・・リョウ・・・』
後ろから小さく、そして優しくヒトカゲの鳴き声が私に呼びかけるように聞こえてきた。私が振り返ると、そこにはやはりリョウがいた。
『やっぱり・・・緊張してるんだな、お前でも』
『・・・どうしてそう思う?』
『だってさ、いつものカナみたいに・・・何て言うんだろ、ハツラツした感じが無いから』
『そう・・・かな』
『カナはさ、やっぱり元気な方が合ってると俺は思うけどな』
リョウはそう言って微笑みかけてくる。・・・誰のお陰で思い悩んでると思ってるのか、ガツンと・・・いや、 ガツンと言っても何も解決はしないだろう・・・それよりも今私は目の前にあるリョウの顔にまた鼓動が早くなり始めている。 チコリータの体の中を、熱い想いが駆け巡っていく。リョウは目の前にいるのに、その思いを伝えられないもどかしさ。でも・・・ やっぱり言えない。
『ゴメン・・・ちょっと一人になりたいかな・・・』
『・・・わかった、でも、試合までには元気出せよ』
『うん・・・ありがとう』
リョウは私の言葉を聞いて、ふぅっと小さくため息をつくと、離れて待っていたハッサム・・・ジョウ先輩のところへと駆け寄っていった。 そしてそのまま奥の練習施設へと入っていく後姿を見届けると、私も小さくため息をついた。
『・・・やっぱり、リョウのこと?』
『え?』
私の横にはいつの間にか、マイ先輩がいた。ピカチュウのつぶらな瞳で心配そうに私を見つめている。
『さっきからずっと、元気が無いからさ。起きた直後は元気だったから、その後何か有ったかなって考えたら、 リョウのことぐらいかなって思って』
『・・・正直自分でもよく分からないんです』
私はリョウが入っていった練習場の方を見つめて呟いた。
『私は・・・リョウの事はクラスメイトだと・・・ここへ来てもずっと思ってたんです。仕事とか、バトルとか・・・ 同僚としてよりもそっちの方がしっくり来てて・・・でも・・・』
『でも?』
『・・・意識、し始めると止まらないもんなんですね。・・・私今まで、こういう経験無かったから・・・ 自分の気持ちをどう整理すれば分からなくて』
『・・・なるほどね・・・で、どうしたいと今のところ思ってるの?』
マイ先輩に聞かれて、私は少し俯く。頭の中で色々巡る言葉やリョウの事。彼がたくましくバトルの練習に励む姿。
『・・・自分のためにも・・・リョウのためにも、頑張らなきゃって・・・頭では理解できてるんです。けど・・・』
『けど?』
『・・・怖いのかもしれません。バトルとはいえ・・・お互いを傷つけることに』
私はそういうと、まだ誰もいないステージの方へと近くまで歩み寄っていく。ここで私とリョウが戦うことになる。 この1週間鍛えてきた技を、お互いにぶつける事になる。
『・・・カナ、一つ・・・ううん、二つかな?覚えておいて欲しい事・・・気づいて欲しい事があるの』
『・・・二つ・・・?』
『うん、一つはカナの知らない事で知って欲しい事。一つはカナも知ってるはずけど、多分忘れてしまっている事』
『・・・何ですか?』
私は首を傾けてマイ先輩のほうを向いた。
『PBEでね、上位にいるポケモンていうのは、どんなポケモンだと思う?』
『・・・バトルが強いポケモンじゃないんですか?』
『そう。ズバリそうなんだけど、でもポケモンとして強いだけじゃ上にはいけない』
『・・・?』
『やっぱり、心が強くないと。・・・精神論になっちゃうからさ、気合だ根性だとか言わないけど、気持ちで負けたら勝てないのは、 ポケモンの世界でも一緒だよ』
私は黙ってマイ先輩の話を聞きながら頷く。マイ先輩の言う通り、メンタル面が弱かったら勝てるバトルも勝てなくなってしまう。
『それと・・・もう一つ』
『はい』
『・・・質問なんだけどさ、カナは今までPBEの試合をずっと見てきたわけだよね?』
『はい・・・ファンでしたから』
『じゃあ、今までポケモンバトルを見てきて・・・PBEに限らずね、ポケモン達が互いを傷つけているのを見て、 可哀想とか思ったことは有った?』
『え・・・?』
そう言われてみると、考えた事なかった。確かにポケモンはよくバトルをしている。私もずっとPBEを見てきていたけど、 戦っているポケモンをそういう風に見た事は無かった。多分それは・・・。
『・・・考えた事なかったです・・・』
『何故?』
『戦っているポケモンが・・・多分、生き生きしていて、バトルを楽しんでいるように見えたから・・・』
『そう、PBEがただのポケモンバトルと違うのは、人間がポケモンに変身しているって言うのもあるけど、 それ以上にコレがエンターテイメントであるという事が、スポーツのバトルとは違うの』
『・・・そうですね、PBEは見に来てくれる観客を楽しませるためにやってるんですよね』
『そういうこと。ただ、相手を倒すだけのバトルじゃない。戦う相手とのコンビネーションも大事なの。 何をどうすれば盛り上げることが出来るのか、考えて行動し、でもそれを表に出さないように』
『・・・難しいですね・・・』
『でも、貴方たちならきっと出来ると思って、今日の組み合わせにしたの』
『え・・・?』
私はきょとんとした顔でマイ先輩のほうを見つめた。その様子を見たマイ先輩はくすっと小さく笑った後、すぐに言葉を続けた。
『ゴメンね、でも、折角難関といわれるPBEにもともとの知人が合格したんだったら、 やっぱりその2人でコンビを組んだ方がいいかなって思って』
『コンビ・・・』
『・・・これから、プライマリ、セカンダリ、そしていずれはゴールドやプラチナを目指す中で、 バトルごとに対戦相手はその場限りショーを盛り上げるパートナーになるの』
『・・・パートナー・・・そうですね・・・』
『でも、その感覚をもっと自然に掴んで欲しいと思って、今回2人のカードを組んだの。・・・カナが思っている悩み、 PBEでポケモンになったメンバーがいずれは通る道なの・・・私もそうだったし』
『マイ先輩も?』
『うん。だから、ちょっと荒療治だけど初戦からリョウと当たって、PBEでの戦いに慣れて欲しいって思惑があったりしたの・・・ ゴメンね?』
マイ先輩はそう言いながら、少し申し訳なさそうに言った。私はマイ先輩のほうをしばらく見ていた後、 無言で再びステージの方を振り返った。そのまま沈黙してしばらくステージを見つめていた。そしてふと、マイ先輩に言葉を切り出す。
『ステージ・・・ちょっとだけ入ってもいいですか?』
『うん。・・・準備してるほかのスタッフやポケモンの邪魔にならないようにすれば大丈夫。私がついてるから』
『有難う御座います』
私はマイ先輩に頭の葉っぱを揺らしながらお辞儀をした。そしてゆっくりとバトルステージの中へと入っていく。辺りをゆっくりと見渡し、 その情景を目に焼き付けた後、私は静かに目を閉じる。そして頭でゆっくりと、過去に私が見てきたPBEのバトルを思い浮かべる。・・・ 数え切れないぐらいのバトルを見てきた。小さい頃から最近まで、この舞台に憧れて私は生きてきた。 今まで見てきたPBEの試合を順に思い出していく。最近だと、スイクンの活躍が特に印象に残っている。 そのスイクンがサイバラさんだと知ったとき、少し驚いたけどあの人を見ていると、さっきマイ先輩が言っていた、 上に行くには心も強くなくちゃだめという意味が分かる気がした。
やがて私の記憶は小さい頃にさかのぼる。幼い頃は、バトルの意味なんてわかっていなかったけど、 目の前で繰り広げられるポケモン達の激しい動きに、幼心が揺れたのを記憶している。・・・そういえば、 小さい頃にチコリータのバトルを見た事が有った。相手が何のポケモンだったか覚えていないけど、バトル開始からずっと苦戦を強いられていて、 追い詰められそうになった時、私は必死で叫んでいた。
「チコリータがんばって!」
その声援の後、チコリータは形勢を逆転し、見事強敵であった相手ポケモンに打ち勝ったのだ。思えば、このとき私の心のどこか、 深いところでチコリータに対しての憧れが生まれていたのかもしれない。・・・PBEのスタッフになって思えば、 そのバトルは不利と思われていたチコリータが追い詰められた後、形勢を逆転し勝利する事で場を盛り上げる、 という筋書きになっていたのかもしれない。でも、私に限らずそれを見ていた誰もが、それをやらせだなんて思ってはいない。 そこで繰り広げられるのが、どういった形であれ、正真正銘のポケモンバトルだったからだ。きっとその時のチコリータと相手ポケモンも、 スーツを着て変身した人間だったんだろう。バトルが盛り上がるように、お互い観客には分からないように、 身も心もポケモンになって戦いながらも、人間としての判断力でバトルの盛り上げ方を考えてバトルをする。ポケモン同士、 相手を理解していなければ出来ない事だろう。
『・・・だから・・・私とリョウなら・・・』
私は・・・まだまだ、リョウの気持ちを上手く理解できなかったり、リョウだって私の気持ちに気づかなかったりしている。 意思の疎通は当然完璧どころかまだまだだ。けど逆に、リョウが相手だからこそ、私の力を、技を、思いを受け止めてもらえる・・・ そんな気がしていた。
『カナ・・・どう、気持ちは』
『・・・マイ先輩・・・そうですね・・・少しだけ楽になった気がします』
『カナ、ポケモンにとってポケモンバトルはね、ただ傷つけるだけじゃなくてお互いを理解するための手段なの』
『お互いを・・・理解する・・・』
『バトルを通じてでしか得られないものも有るの・・・カナは、リョウから得たいものとか、与えたいものとかある・・・よね?』
確信したようにニヤついた表情で私の方を見てくる。私は不服そうな表情を浮かべてマイ先輩のほうを見返したけど、 そんなお互いの表情を見て私たち2匹は思わず笑ってしまった。
『ほら、やっぱりカナは笑っている方がいいよ』
『そう・・・ですね』
『さぁ、私たちも最後の仕上げ、練習しよ!身体をあっためないと』
『はい!』
私達2匹は揃って練習場へと駆けて行った。そこでは既にリョウや、 今日バトルを予定しているゴールドやプラチナの強そうなポケモン達が練習を始めていた。・・・私は一瞬、リョウに声をかけようとし、 リョウもまた私の方を見て声をかけようとしたけど、結局どっちからも声はかけなかった。 今は兎に角最後の練習に集中しようと考えていたからだろう。自分のためにも、相手のためにも、 そして何より自分たちのバトルを見に来てくれる観客のためにも、最高の状態でバトルを演じたい。その事が私たちを練習に駆り立てていた。
「新人戦30分前です!出場者は練習を切り上げて、会場袖に準備してください!」
人間のスタッフの声が練習場に響き渡った。私とリョウ、その指導をしていたマイ先輩とジョウ先輩は4匹揃って練習場を後にして、 出場ポケモンが控える会場袖にやってきた。
『じゃあ、私達は2人のバトルがよく見えるように、人間に戻ってスタッフルームに行くからね。この後の指示は会場スタッフに従ってね』
『分かりました』
2人の先輩はそれぞれに同じ旨を告げると、今来た通路を戻っていった。そして会場袖にはチコリータとヒトカゲ、 その周りには会場指揮と警備のための人間のスタッフが数名いるだけ。つまり、 ポケモンの言葉はその場にいる2匹のポケモン同士でしか通じない。
『カナ』
『ん?何?』
『・・・』
『・・・?何、どうしたの無言で?』
『・・・よかった』
『え?』
『元気戻ったみたいで』
『・・・そう見える?』
『チコリータの姿でも、お前の表情は分かるよ』
・・・ついこの間、私の表情が赤くなっているのに、こっちの気持ちに気づきもしなかったくせに・・・なんて思いつつも、 彼が私のことを心配してくれていた事は凄く嬉しかった。
『ゴメンね・・・心配かけたけど、でももう大丈夫。精一杯、リョウとバトル出きるよ』
リョウとだからこそ、きっと楽しいバトルが出来る。私は心の中で既に確信していた。
『そうか・・・やっぱ、その方がお前らしいよ。・・・俺も負けないように全力で頑張らないとな』
リョウは笑顔で私に語りかけてきた。私もそれに答えるように微笑みかけた。
「そろそろバトル始まります!それぞれ入り口まで進んでください!」
スタッフが私達にそう声をかけてきた。私は急いで通路を進もうとしたとき、リョウが呼び止めた。
『ちょっと待って!』
『何?急がないと』
『・・・でもさ、その前に一発気合入れとかない?』
『気合・・・?』
ヒトカゲは私の方を見ながら、自分の小さな手で握りこぶしを作り、私の前に突き出した。私は一瞬考えたけど、 自分のつるを伸ばしてその拳と付き合わせる。私達はゆっくりと息を吸い、お互い瞳を見開いて相手を見つめる。そして大きな声で叫ぶ。
『精一杯楽しいバトルが出来るように!』
『観客のみんなが盛り上がるようなバトルが出来るように!』
『行くぜ!』
「カゲェ!」
「チコォ!」
私達は言葉にならない鳴き声を力いっぱい上げると共に互いに手とつるで力強くぱちんと叩き合わせると、 お互い急いで異なる会場の入り口へと駆けて行った。バトルステージの左右の入場口に私達は構え、自分たちの出番を待つ。 私はsの出番を待つ緊張感の中で、今再びリョウの手と重ね合わせた自分のつるを見た。・・・大丈夫、自分なら・・・ 自分たちならきっと大丈夫。私はそう自分に言い聞かせていた。
「チコリータがんばって!」
不意にあの幼い頃の自分の声が聞こえたような気がした。あの日の自分が、あの時チコリータに憧れを持った小さな私が、 チコリータとなった今の私を応援している。・・・きっと、会場に来ている子供たちや、大人達も、夢や希望を持って見に来てくれている。・・・ 今の私がすることは、自分がよく知るリョウと共に、チコリータとヒトカゲのバトルを見てもらい、みんなに楽しんでもらい、 盛り上がってもらうこと。
「これよりぃ!PBEがこの度新たに捕獲、調教したポケモンによるぅ!新入戦を開始したいとぉ!思いまぁーす!」
会場に司会進行の声が高らかに鳴り響く。・・・既に盛り上がり始め歓声が聞こえ始めた会場を前に、2匹の小さなポケモンは、 本当の意味でポケモンとしての第一歩を踏み出そうとしていた。
PBE Beginning 第6話 完
第7話へ続く
そしてただ強い、勝つだけではいけないポケモンバトルの意味…「ポケモントレーナーはポケモンの保護・育成をかねた存在である」と言う見方をしている僕としてはかなりうなずけてしまう理屈ではあります。
果てさてこの二人の初舞台はどうなりますか。
そして人間に戻った後の二人の展開は・・・次回も楽しみです。
★宮尾レス
カギヤッコ様コメント有難う御座います。
僕の定石として「変身がきっかけになって関係が進展」というのが有って、それを素直に実行しているのがPBEですねw
>勝つだけではいけないポケモンバトル
PBEがただのポケモンバトルと違うのは、目的が勝敗や強くなる事よりも、いかにして人の心が動かせるかにあるところです。「圧倒的な強さ」も勿論魅力ですが、それ以外でもアプローチの方法は有るだろうという考えですね。
さて、初バトルを通して2人がどうなるのか、是非次回までお待ち下さい!
今まで何度なく読ませて頂きました。(特にポケモン小説に関しては)
…遂に来ましたか、2人の本当の意味での「戦い」の時が…。
マイ先輩の言葉が頭の中を何度も駆け巡りました。
『──ポケモン達が互いを傷つけているのを見て、可哀想とか思ったことは有った?』
…成る程これが一つの答えなんだなぁ、と。
だからこそ、PBEは「観客を楽しませるエンターテインメント」──「思いを共有できる、楽しみ楽しませる場」になり得たんですもんねっ。
自分自身、此方の小説の世界では、トレーナーが居ない自立したポケモンたちを扱っていて、トレーナーに対してある程度否定的です、…だから尚更この言葉は心に染みました。
悩んで悩んで、そして自分なりの答えを出そうとしている──そんな2人を最後まで応援したいと思いますw
頑張れカナ!リョウ!^^
(駄文ですいません…)
★宮尾レス
ガーリィ様コメント有難う御座います。
僕自身、ポケモントレーナーがポケモンを戦わせていることには何処か釈然としないものがありました。しかしながら、アニメなどで見ている限り、僕は”ポケモン達が互いを傷つけているのを見て、可哀想とか思ったこと”は無く、だとすればそう感じさせない何か魅力のようなものがポケモンバトルに有るからであり、それをより具現化すれば質の高いエンターテイメントになると考えた次第です。現実に置き換えると”競走馬は競馬するために生まれてきたのか”という疑問に近いです。
まぁ、あんま考えると難しくなっちゃうテーマなんで(笑)、2人の恋愛で濁しつつあとは2人・・・もとい2匹のバトルを楽しんでいただければと思っております。
それではストーリーに・・・
PBE!楽しみに待ってましたよ〜!
ついに始まりますね、2人のバトルが。
カナは『戦いたくない(傷つけ合いたくない)が、戦はなければならない・・』の葛藤の中でさらにリョウに対しての想いまでもが・・・
でもマイ先輩の言葉によってカナは、PBEで戦う事はただ戦うのではなく、「エンターテイメント」であるという事を教えられ、『バトルごとに対戦相手はその場限りショーを盛り上げるパートナー』、と・・・
『ただ傷つけるだけじゃなくてお互いを理解する』という180°変わったバトルに対しての考え・・・
カナはその対戦相手となるリョウに対してもてる力を発揮できるか!?
次回も楽しみに待ってますw
★宮尾レス
コメント有難う御座います。
勿論覚えてますので大丈夫ですよw
カナは元々「PBEの楽しさ」を理解できている子なのですが、大人への成長で少し戸惑いを見せてしまいます。でも、きっとこのバトルがカナ、そしてリョウの新たな関係への第一歩でも有ると思ってますし、それを上手く描く事ができればイイナと思ってます。
★宮尾レス
コメント有難う御座います。
どちらが勝つのかはこれからのお楽しみということでご期待下さい。ただ、どちらが勝つにしても、勝つ事だけが大事じゃないのがPBEです。バトルそのものの盛り上がりを上手く表現できればいいなと思っております。