2008年12月31日

私立アルファ学園物語〜3年幻組ラズ八先生〜

私立アルファ学園物語〜3年幻組ラズ八先生〜

【人間→ポケモン】

 

ここは私立アルファ学園。
都内某所にある、人間とポケモンが通う学校だ。
ポケモンなのに何故都内なのかは、問い詰めてはいけない方向で何卒宜しく御願い致します。

今日も学校の中では、真面目に不真面目に、楽しく授業が行われていた。

「よーし、じゃあ教科書81p開いてー。先週の貿易の話の続きからするぞー」
「ラズ八先生。質問があります」

授業を始めようとするラズ八先生に対して、手を上げながら立ち上がり言葉を挟んだのは、
学年でもトップ争いを繰り広げ、クラスでも貴重な突っ込み役であるタツキだった。

「何だークサカ。言ってみろ」
「教師が、教卓に乗って授業するのはおかしいと思います」
「仕方ないだろ。こうしないと、教卓に隠れちゃうし」

先生は4本の脚に力を込めながら、タツキに対して吼えたてた。
ラズ八先生はグラエナなのだ。

「大体、その身体でどうやってチョーク持つんすか?そもそも、字が書けるんすか?」

後ろの席から質問を投げかけたのは、制服をやや着崩している不良のトウヤだ。

「字など書けなくても、お前等に伝えられる情熱は有る!
・・・っていうか、今そういう突っ込みやめてくれる?
少なくても先週授業やった設定になってるのに、今日初めて授業やるみたいな空気になっちゃうだろ?」
「じゃあ先生、僕も聞いていいですか?」

そう言って手を上げたのは、不敵な笑みを常に浮かべている謎のトウヤの弟、ビャクヤだ。

「おぉ!ビャクヤ!俺に助け舟を出してくれるのか!流石に昔一緒に旅しただけのことは・・・」
「仲の悪かったレナと、どうして一緒になったんですか?」
「グハァッ!?」

ラズ八はやや吐血気味に目を白くしてうろたえた。

(ていうか、それ位で吐血すんなよ・・・)
(ていうか、ビャクヤってそんなキャラなんだ・・・)

「ば、馬鹿それは勿論・・・互いが互いのこと好きになったからで・・・ていうか、本編に絡む話は本当にやめろって・・・!」
「じゃあ、アレですね、好きになってもらうために××や○○○とか、△△な□□□□をしたんですね?」
「ちょ、おま、殆ど伏字じゃねぇか!quadruplus!は全年齢向けっていつも言ってるだろ!?」
「僕に逆らうんですか?・・・一緒に旅をしてたころの、こんな写真とか・・・持ってたりして?」

ビャクヤはニヤニヤしながら懐から何かの写真を取り出すと、それをラズ八に見せ付けた。
その瞬間、ラズ八の表情は大きく変わった。

「ば、おま、それマジでやばいって!」
「コレをレナに見せたら、どうなるかなぁ?」
「やめろって!ホントやめろって!」

(鬼畜だ・・・)
(・・・わが弟ながら・・・鬼畜だ・・・)

ビャクヤとラズ八のやり取りを見ながら、タツキとビャクヤはため息をつきながら顔を見合わせた。
そして2人とも小さく頷くと、急に立ち上がって窓の方へと歩き出した。

「こら!そこ!何でかってに立ち歩くんだよ!?」
「授業進まなさそうだし、私クラストップの設定だから、授業受けなくても大丈夫なので散歩してきます」
「以上同文、俺不良の設定だから、授業受けたくないので以下同文」
「セリフを略するな!ていうか、散歩するなよ!?」

ラズ八の言葉に聞く耳を持とうとせず、タツキとトウヤは窓を開けて、
飛び降り防止用の鉄棒を越えて窓の外へと身を乗り出した。

「じゃ、行ってきまーす」
「って、オイ!?ここは4階だぞ!?」
「俺はポケモンだ!空を飛べるんだ!」
「それ、アメリカの事件だから!」

ラズ八先生の突っ込み虚しく、トウヤとタツキは窓から飛び降りた。
その瞬間、2人の身体は光に包まれ始める。
タツキの身体は、制服から伸びる手足が徐々に短くなって、ついには消えてなくなると、
スカートの下からは脚の代わりに、先っぽに丸く青いクリスタルを2つつけた長い尻尾が姿を現した。
そして全身が長く伸びていき、ブレザーとスカートの間が広がっていく。
そこから見える彼女のおなかは白く変色していた。
同じように、背中は青くなっている。
顔もすっかり変わりつつあって、顔全体が前へと突き出し、額からは角が生え、
顔の横からは耳の代わりに羽根が生えていた。
そして、彼女は身体を振るわせて、身体に引っ掛かっていた制服を身体の下の方へとずりおろし脱ぎ捨てると、
その姿は完全にハクリューの姿そのものとなっていた。

一方のトウヤの姿も、人間でなくなりつつあった。
彼の体が一回り大きくなったかと思うと、着ていた制服は窮屈そうに張り詰めて、
すぐに破れ去ってしまい、中から現れたのはオレンジ色の鮮やかな身体だった。
そのおなかは、重心を保つためなのか大きく突き出している。
手足はリーチが短くなり、指も本数が減り、その指先からは鋭い爪が生えてきた。
それはまさにドラゴンのものだった。
お尻からは長い尻尾が伸び、タツキとは異なりその先には熱い炎が灯されていた。
背中には大きな翼も生えている。
そして彼の顔もまた、前の方に突き出して、口元には鋭い牙が生えている。
頭の上からは2本の角が後ろの方に飛び出しているその姿は、もうリザードンそのものだった。

2人、いや2匹は地面スレスレまで落ちたところでぐぅっと身を反らして、
そのままスレスレの低空飛行のまま校庭を駆け抜けていった。

「ラズに悪いことしちゃったね」
「まぁ、たまのギャグ短編なんだ。気にすることはないさ」
「それも・・・そうだね」

リザードンの言葉を受けて、ハクリューは微笑みながら答えた。
そして2匹は寄り添いながら、校庭の外へと出て行った。

「畜生・・・俺の授業は、そんなに受ける価値無いのか・・・!?」
「畜生・・・本編では全然発展してクセに・・・何でこんな短編だけラブラブなんだよあの2人は・・・!?」

教室に取り残されたラズ八とビャクヤは、違う理由で愚痴りながら、
外へと出て行ってしまった2匹を見送っていたが、やがてお互いの方を見合うと、
切なげな表情でお互いに言葉を交わした。

「・・・なんか、鬼畜キャラ勝手に設定されちゃったんだけどどうしよう・・・」
「俺なんか、ヘタレキャラだぞ・・・本編に差し障るよ、これ・・・」

落ち込みながら頭を下げてしばらく黙り込んでしまったが、先に沈黙を破ったのはラズ八だった。

「・・・まぁ、大丈夫さ。所詮は番外編だし・・・気にするなって」
「ラズ八先生・・・!」
「さぁ、今日はもう帰ろう!一緒に夜まで飲み明かそう!」
「先生、僕未成年です」
「グハァッ!?」

ラズ八はやや吐血気味に目を白くしてうろたえた。

そして、その頃屋上。

「いいの?授業に出なくて。ラズ八先生なんでしょ?」
「いいのいいの。・・・っと、オベリスク召喚ー」
「えぇー、このタイミングでそれだすのー?」

ロコンとピカチュウが、某カードで遊んでいた。

「どうせ今回は、前回本編の出番が少なかったラズの救済措置だし」
「何か・・・救済された雰囲気じゃないんだけど・・・」
「いいのいいの。コレでラズも、一皮むけるっしょ?」
「そうかもしれないけど・・・あ、トラップ発動で」
「あちゃー、HPギリギリだなーっと。
・・・おい、パル。お前息子なんだから、慰めてきてやればいいじゃん。いいじゃんすげーじゃん」

ピカチュウは手札を確認しながら、近くにいたポチエナに声をかけた。

「無理。今ともだちきゅうじょ中」
「学校の回線をWi-Fiに使うなよ」
「どうせ単なる税金の無駄遣いなんだから、こういうところで使わないと」
「ていうか、本編とキャラ違いすぎるだろお前は。可愛らしい子どもっぽさは何処行ったんだよ」
「最近の子どもは、ドライなんだ」
「最近の子どもが、最近の子どもっていうなよ」
「リヒトも最近の子どもでしょ?」
「過去の僕を知ってるからって・・・馴れ馴れしくするなよ!」
「何故そこだけ本編キャラ!?」
「ファンサービス」
「大丈夫よ。そんな気を使わなくて。どうせファンいないし」
「グハァッ!?」

ピカチュウはやや吐血気味に目を白くしてうろたえた。

今日も学校の中では、真面目に不真面目に、楽しく授業が・・・行われませんでした。
こんな感じなってスミマセンでした。

『私立アルファ学園物語〜3年幻組ラズ八先生〜』 完

posted by 宮尾 at 20:08| Comment(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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