2008年06月17日

おまかせPTT!〜こう見えて色々と考えているんだスペシャル〜

おまかせPTT!〜こう見えて色々と考えているんだスペシャル〜

【人間→ポケモン】

 

青い空。白い雲。勇気を持って踏み出すには絶好の日和である。こういう日の昼休みには、 女子高生たちはお弁当を持って屋上とやってきて、明るい笑いを振りまいて携帯片手にお食事なんかしたりするわけで。

 

・・・しかし、昼休みが終われば皆当然授業があるから教室へと戻っていく。そうしてまた、生活に必要の無い知識を身につけるのだ。 そんなわけで、もう午後の三時を回ったこの時間、本来はこんなところに女子高生なんているはずはなかった。

 

でも、彼女は確かにまだそこにいたのだ。・・・何故か。

 

いなきゃ、物語が始まらないからである。

 

「・・・ん、んんー・・・?」

 

屋上にあるタンクの日陰で、さっきまで寝息を立てていた少女はようやく目を覚まし、寝ぼけた目で辺りを見渡す。

 

「・・・はぅ!ひょっとして私、また昼寝しちゃってたんですか!?」

 

誰に聞いているのか、少女は一人驚きの声を上げながら時計に目をやった。・・・さっきも言ったとおり、短針は既に3を過ぎている。・・ ・6時間目の最中ぐらいだろうか。

 

「はぅ〜っ・・・悪い癖です・・・出席数割ってしまいますぅ・・・」

 

少女はずれ落ちた眼鏡を直した後、暗い表情で頭を抱えてうずくまってしまった。多分、 いつものことだと教師も早退扱いにしてしまっているだろう。出席時間が足りないと、当然進学できなくなってしまう。今時、 高校浪人は勘弁願いたい。

 

「ぅぅ〜・・・くよくよしてても仕方ないです!今は明日昼寝しない方法を考えることが大事です!・・・頑張れ、私!頑張れ、美鈴!」

 

少女は自分の名前を叫びながら、自分の頬を両手で軽くぱちんと叩き、自分に気合を入れた。

 

「よし、そうと決めたら早速・・・そうですね、今のうちに沢山お昼寝をして、眠くならないようにしましょう!」

 

少女、美鈴はそう言って再びタンクの日陰に横になった。

 

青い空。白い雲。一人の少女は、明日昼寝しないために勇気を持って、今昼寝することを決意した。彼女はゆっくり静かに瞳を閉じると、 まだ見ぬ明日に、想いを馳せながら静かに眠りの中に落ちていった。

 

 

おまかせPTT!〜こう見えて色々と考えているんだスペシャル〜 完

 

 

 

 

『って、んなわけねーだろ!』

「は、はひぃ!?今、どこかから声が!?」

 

折角物語を終えようとしたまさにそのタイミングで、美鈴の耳に突然、誰かの声が聞こえてきた。・・・”誰か” という表現が正しいかどうかは今は別の話だが。

 

美鈴は慌てて目を開ける。・・・すると目の前に飛び込んできたのは、青い空でも、白い雲でもなく、黒い影。美鈴の前に、黒い影。・・・ 何かが落ちてくる!

 

「はひぃぃっ!?」

 

慌てて飛び起き、美鈴は少し飛び跳ねながら、その場からよけようとしたが。

 

「は、はひゃぁ!?」

 

慌てていたためか、思わず何も無いところでつまずいてしまい、美鈴は豪快にこけてしまう。とほぼ同時に、 さっきまで美鈴が寝ていたところに、彼女がさっき見た黒い影がドーンと落ちてきたのである。舞い上がる砂埃。それが目や口に入らないように、 美鈴はとっさに痛みをこらえながら顔を手で覆った。やがてそれが落ち着くと美鈴は恐る恐る手をよけて、落ちてきたものが何なのか確認する。・ ・・そこにあったのは・・・いや、そこにいたのは。

 

「ピ、ピジョットォ・・・!?何でピジョットが空から・・・!?」

 

人間の子供よりも大きな身体と翼、それに黄色と赤の鮮やかで美しい、長いとさかを持った巨大なハトのような鳥。・・・そう、 ポケモン全国図鑑018のとりポケモン、ピジョットの姿だった。ピジョットは力なく倒れこんだままびくともしない。 美鈴は恐る恐る近づきながら、ピジョットの様子を確認する。

 

・・・ここは人とポケモンが共存している世界。人は文明を築き、 ポケモンをパートナーとして生活するようになってから随分経った時代である。この世界にはかつて”セント・ノルマンディ戦争” と呼ばれる紛争が・・・。

 

『こんなタイミングで世界観紹介!?普通冒頭か、逆にもう少し世界観見えてきてからだろうが!』

「は、はひぃっ!?」

 

突然、大きな鳴き声を上げながらピジョットはその大きな翼を動かして体勢を整えると、鋭い爪を持った二本の足ですっと立ち上がった。 その姿を覗き込んでいた美鈴は驚いて身体をのけぞらせてしまい、何とか体勢を立て直そうと腕をブンブン振り回したが、 誤って腕が自分の眼鏡に当たって眼鏡を落としてしまい、彼女自身もまた後ろにこけてしまった。

 

「ぁぅ〜・・・、またこけてしまいました・・・」

『・・・ちぃ、一般人に見られたか』

 

ピジョットは、ポケモンにしか分からないポケモンの言葉で、その鋭いくちばしを動かしながらそっと呟いた。その時1人と1匹の上空に、 再び何かの影が覆いかぶさった。1人と1匹は上を見上げ、美鈴は相変わらず驚きの表情で、ピジョットは何処か渋い表情でそれを眺めていた。

 

『全く、何に突っ込んだのかは知らんが、それでバランスを崩して落ちてしまうとは、気が緩みすぎだぞ。大悟』

『うるせぇ!基樹!俺にだってなぁ、色々と事情があるんだ!お前だって知ってるだろ!』

 

ピジョットは、ポケモンにしか分からないポケモンの言葉で、上空から降り立ってきたポケモンに対して叫んだ。美鈴もまた、 そのポケモンの姿を見て、小さくその名を呟いた。

 

「今度は・・・フライゴン・・・!?」

 

下にいるピジョットよりも更に一回り大きな身体。鮮やかな緑色の身体に、赤く縁取られたひし形の翼。 赤いドーム型の複眼に守られた目と、頭の上からすっと伸びる二本の角。虫のようにも見えるそのドラゴンの姿は、 全国No330のフライゴンだった。ただし、コチラは首の周りにウエストポーチのようなものをつけている。

 

「どうなってるんですぅ・・・何でピジョットとフライゴンが急に・・・!?」

 

美鈴は混乱する頭を何とか整理しながら、さっき落としてしまった眼鏡をかけなおし、改めて2匹のポケモンがたたずむ方を見た。

 

『兎に角、この子が我々の事を普通のポケモンだと思っているうちに、すぐに飛び立つぞ。分かったな、大悟』

『言われるまでもねぇ!大体基樹は一々一々俺の行動にケチを付けやがって・・・!』

 

2匹のポケモンは、ポケモンにしか分からないポケモンの言葉で、互いに言葉を交わしながらすぐにその場を立ち去ろうと、 共に翼をはためかせようとした・・・その時だった。

 

「ま、待ってください!大悟さん!基樹さん!」

 

2匹の傍にいた少女、美鈴が2匹を呼び止めた。2匹は慌てて美鈴の方を振り返った。・・・そして改めて美鈴の姿を確認したピジョット・ ・・大悟の様子がなにやら翼を震わせながら、はっとした表情で美鈴のことをじっと見ていたが、やがて静かに、 震えた鳴き声で何かを言おうとする。

 

『・・・メ・・・メ・・・!』

「・・・メ?」

『眼鏡っ娘・・・萌・・・!』

『何ィィーーッ!?』

 

顔を赤らめながら突然カミングアウトしたピジョットに対して、 流石に物静かな風貌のフライゴンも大声を上げて少し驚いたような呆れたような表情を浮かべた。

 

『お前・・・眼鏡好き・・・だったのか・・・!?』

『眼鏡好き・・・フッ、違うな・・・』

 

ピジョットは、その両翼を腕のように動かして、馬鹿にしたように鼻で笑うと、真剣な表情でフライゴンを睨みつけながら言い放った。

 

『俺は・・・眼鏡フェチだ!』

『・・・そう、か。・・・よかった、な』

『俺は・・・眼鏡フェチだ!』

『いや、何で二度言ったんだよ』

『コピペミスだ』

『・・・そう、か』

 

ピジョットの空回りっぷりに、逆にようやく気分が落ち着いてきたのか、 フライゴンは改めて呆れた表情を浮かべながら小さくため息をついた。・・・しかし、まだこの時点では2匹とも大事な事をスルーしたことに、 まだ気付いていなかった。

 

『・・・大事な事?』

『ん?どうした?』

『いや・・・何か大事な事をスルーしているらしいんだけど・・・』

『大事なこと・・・?』

 

フライゴンはピジョットにそう言われて、ふと考え込む。一体この短いやり取りの中で何をスルーしたと言うのか。そう考えながら、 フライゴンはその手で器用に首のポーチから携帯を取り出すと、急いで「quadruplus!」にアクセスし、「おまかせPTT! 〜こう見えて色々と考えているんだスペシャル〜」をクリックした。

 

『・・・それまずくないか?』

『文明の利器は、利用しなければな』

『いや、世界観の問題で・・・』

『・・・あぁっ!?』

『ど、どうした、基樹!?』

 

フライゴンは何かに気付いたのか、大きな声を上げて携帯をじっと見つめていた。そして慌ててほったらかしにしていた眼鏡っ娘、 美鈴の方を見た。

 

『あぁ!そうだ、美鈴ちゃんのこと忘れてた!』

「え?何で大悟さんが私の名前を・・・!?」

『・・・大悟!・・・どうやらスルーしている大事なことって、このことみたいだ』

『だから、美鈴ちゃんの存在を・・・』

『違う!存在自体じゃない!・・・気付かないのか・・・今この瞬間に起きている、出来事に!』

『この瞬間・・・!?』

 

そう言われ、ピジョットは改めて会話の流れを整理する。特に、美鈴の発言を注意深く。

 

『・・・美鈴ちゃんの・・・発言・・・?』

 

ピジョットはすぐに言葉の意味が理解できなかったようだが、しばらく経ってようやくはっと気付いた様子で美鈴のことを振り返った。

 

『・・・美鈴ちゃんが・・・俺の名前を・・・呼んでる・・・!?』

「・・・はい。確かに、私が呼びました」

 

そう、本来ありえない出来事が起きている。ポケモンにしか分からないポケモンの言葉で話している筈の大悟の言葉を、 美鈴は理解しているのだ。だが、美鈴はそのことを当たり前のようにしている素振りだし、一方のピジョットとフライゴンも、 驚きこそあるようだが、特に疑問は持ってないようだった。

 

「あ、あの!大悟さん・・・でいいんですよね?さっきお名前呼ばれてたみたいですから。・・・ さっきアレだけ強く体ぶつけたみたいですが、身体、大丈夫ですか?」

『俺は美鈴ちゃんのためならどんなケガだって怖くない』

『会話が成り立ってないぞ。眼鏡バカ』

 

フライゴンは、その小さな手で首元を掻きながら、長い首をひねらせて反対の方を見ながらそう言った。しかし、 すぐに美鈴の方を振り返ると、まじまじと彼女を見ながら小さく呟いた。

 

『・・・まさか、こんなところに適合者がいるとはな・・・』

「適合・・・者・・・?」

『・・・そうか、適合者だから俺達の言葉が・・・でも、上が管理しているはずじゃないのか?』

『そうだな。確認する必要が有りそうだ・・・』

 

フライゴンはしばらく考え込む表情を浮かべながら、じっと美鈴の方を見ていたが、やがて何かを決意したかのように美鈴に問いかける。

 

『・・・美鈴さん』

「はひっ!あ、えと、基樹・・・さん」

『美鈴さんは何時頃からポケモンの言葉が分かるように?』

「え?あの、ずっと小さい頃からでしたから、何時頃かは・・・?」

『・・・適合率も高そうだし・・・連れて帰るしかないな』

 

ピジョットのほうに向き直ってそう告げたフライゴンを、ピジョットは僅かに見上げる格好で見返したが、すぐに質問を投げる。

 

『連れて帰るって・・・どうやって?』

『決まってるだろう?本当に適合者なら・・・』

『・・・あぁ、そういうことね』

「・・・はひ・・・?」

 

2匹の意味ありげな会話についていけない美鈴は、あっけに取られたような表情でぼうっとしていた。 するとフライゴンがまた首のポーチから何かを取り出した。また携帯かと思ったが・・・似てはいるが違うもののようだ。 何らかの携帯端末であることに違いは無いようだが。それを幾つか取り出し、何か画面を見比べているようだったが、やがて一つだけを残し、 他は全てポーチの中にしまいなおした。そして、残ったその一つを美鈴の前に突き出した。

 

『美鈴さん。真ん中のこの・・・赤いボタン。ちょっと・・・押してもらって、いい?』

「は、え?あ、はい!」

 

フライゴンに言われるがまま、美鈴は手渡された変な携帯端末の真ん中の赤いボタンを押した。

 

「ぽちっとな」

『古っ!』

 

美鈴は大悟のツッコミを右から左へ受け流しながら、ボタンを押したまま一体何のボタンなのか疑問に思いながら首をかしげた。

 

『そして、ボタンを押したまま、”リフレクト”って叫んでみて』

「え・・・リ、リフ・・・」

 

美鈴は戸惑いから、すぐに言葉が出てこなかったが、深呼吸して気持ちを落ち着けると、改めてフライゴンに言われたとおり叫んだ。

 

「・・・リフレクト!」

 

するとその瞬間。美鈴が持っている携帯端末からEdyで支払いをしたときのような音が聞こえたかと思うと、急に端末が光り始めた。

 

「は・・・はひゃぁっ!?」

 

美鈴は驚いたはずみで、持っていた携帯端末を落としてしまったが、傍にいたフライゴンが上手くキャッチした。しかし、 携帯端末から放たれた光は、それ自身だけでなく美鈴の事も包み始めていた。

 

「な、何なんですかぁ!?」

『いいから、落ち着いて』

『あまり暴れたりすると、変身の途中で足つったり、寝違えたみたいになったりするからなー』

「へ、変身!?」

 

妙なほどに冷静な2匹のポケモンの言葉に、声が上ずりながら応えた美鈴。・・・そう、彼女を包む光は彼女を変身させるための光なのだ。 既に彼女の身体は変化が始まっていた。

 

「手・・・手が!?」

 

彼女のすらりと長い5本の指、そのうち2本が徐々に短くなり、ついには3本だけになってしまう。 その3本の指からは白い爪が鋭く生えてくる。皮膚は柔らかで健康的な肌色から、徐々にオレンジ色の硬い皮膚へと変質していく。 まるで爬虫類のような皮膚に。

 

「ふぇぇ!?」

 

驚きのあまり、美鈴は情け無い声を上げてしまう。しかし、彼女の変化は手だけではなかった。

 

細身でバランスの取れたしなやかな彼女のウエストが、まるで風船が膨らむように大きくなり、 彼女の着ていた制服をいとも容易く破いてしまった。・・・そして破れた服の下から出てきたその身体も、既にオレンジ色の皮膚に変わっていた。 その身体は、徐々に重心が下へと移っていき、彼女のおなかはまるで妊婦のようにいつの間にか前に大きく突き出していた。 そしてその皮膚だけは他のオレンジとは異なり、淡いクリーム色に変色していた。

 

その重い体を支える脚も短くなり、代わりに筋肉は発達し太くなっている。足は裏が平べったくなり、指は手と同様に3本に減り、 やはりその先からは鋭い爪が生えていた。・・・そして、美鈴は次におなかの下から・・・いや背中の下だろうか・・・つまりは、 お尻の辺りが急にぐぐっと盛り上がる感触を感じていた。彼女が慌てて後ろを見ると・・・。

 

「し・・・尻尾ぉ!?」

 

それは、一回り大きくなった彼女自身の身体よりも、更に長く太い、立派な尻尾だったのだ。しかもその先からは、 熱そうな炎がめらめらと燃え上がっていたのだ。驚きのあまりじっとその尻尾を見つめていたが、その視界が急に何かに遮られ、 目の前が真っ青になった。

 

「ふぇぇっ!?何、今度は!?」

 

すると、彼女の目の前の青い何かは、彼女の驚きに合わせてゆらゆらと揺れる。よく見るとその青い何かは、 彼女の変質した皮膚と同じオレンジ色の、棒の様なものから下がっており、その棒の様なものを目で追っていくと・・・ 伸びているのは彼女の背中からだった。・・・そう、それは彼女から生えていた翼だったのだ。尻尾に翼、 本来人間に生えるはずの無い物が突然生えてきて、彼女のパニックは一層勢いを増し、美鈴はあいも変わらず驚きの奇声を上げようとした・・・ が。

 

「ふ、ウェェ・・・グ、うぉ・・・グウォォッ!?」

 

驚きの声を上げようとして、聞こえてきたその声に美鈴は二重で驚いた。・・・いつもの声が出ない。そう思った瞬間、 急に彼女の視点がぐぐっと高く移動し始めた。彼女の首が伸び始めたのだ。それと同時に、彼女の鼻先もぐぐっと前に突き出し始めた。勿論、 首も顔も、その色はオレンジ色に変色している。突き出した彼女の鼻、鼻孔はその先から小さく二開いており、 また彼女が声を出そうと開けた口は、大きく裂けてその中には鋭い牙が生えていた。更に彼女の頭から肉が盛り上がり、 2本の角となって後ろへとぐっと生えていた。

 

「ガルゥッ・・・ガゥ、グウォウゥ・・・!?」

 

その声もすっかり、美鈴のものからかけ離れた、獰猛な鳴き声になっていた。・・・そしてそれは、 さっきまでフライゴンやピジョットが話していたものと同じ、ポケモンにしか分からないポケモンの言葉なのだ。

 

『ど、どう・・・なっちゃったんですか、私!?声がポケモンだし・・・身体も・・・!』

『そうだね、きちんと自分の姿を確認してもらわなきゃな』

 

すると、横にいたフライゴン・・・基樹は、突然美鈴の目の前に大きな鏡を出した。

 

『い、一体何処から取り出したんですか!?』

『大き目の姿見〜(水田わさび)』

『青くて猫型!?』

『俺は大山の方が』

『何の話ですか!?』

 

美鈴はポケモンにしか分からないポケモンの言葉で突っ込んだが、突っ込み終えるとすぐに目の前の大き目の姿見を覗き込んだ。・・・ そこに映っていたのは、本来映るはずの美鈴の姿は無かった。

 

大きな翼、大きな尻尾、まるで神話に出てくるドラゴンのような姿を持つその姿は、全国図鑑006のポケモン、リザードンだった。 唯一違うとすれば・・・何故か落ちることなくかかってる、眼鏡だけ。・・・そう、美鈴が映っているはずの鏡に映っているのが、 メガネをかけたリザードン。・・・答えは簡単だった。

 

『私、リザードンになっちゃったんですかぁ!?』

『そ。生憎手持ちに空を飛べるポケモンがこれしか残ってなかったし、格納するためのモンスターボールにも空きが無くてな。・・・ まさかこんな事になると思ってなかったから』

 

フライゴンの基樹は、冷静な口調でそう答えた。あまりのクールっぷりに、美鈴は思わず言葉を詰まらせる。・・・ 聞きたい事は山のようにあるけれど、言葉が上手く出てこなかった。・・・そしてもう1匹。言葉が上手く出てこないポケモンがいた。

 

『・・・どうした、大悟。ぷるぷる震えて』

『・・・メ・・・メ・・・!』

『・・・』

『眼鏡ッポケモン・・・萌ェェェ!』

『・・・というか、その眼鏡どうやって引っ掛かってるんだ・・・?』

『わ、私に言われても・・・眼鏡かけてる動物キャラのタブーです!』

 

リザードンは困った表情を浮かべながら、指の本数が減って感覚の異なるその手で、何とか眼鏡をくいっと直した。

 

『ぅわぁぁぁ、ポケモンが眼鏡くいっとするの・・・たまんねぇ!』

『おいおい、この小説随分マニアックな趣向に走ってるぞ。大丈夫か?』

『何のことかさっぱり分からないんですが、何で私がリザードンになっちゃったんですかぁ!?』

『やっぱさ、眼鏡は人間よりもポケモンがすべきだよ!ていうか、コンタクト撲滅!』

『作者、多分疲れてるんだな。最近無茶ばかりしてるし』

『身体は重たいし、尻尾や翼だって、どう動かしたらいいか分からないですし・・・ていうか、戻れるんですかぁ!?』

 

三者三様でかみ合わない会話がしばらく続いていたが、

posted by 宮尾 at 00:10| Comment(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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